「生命保険信託って何?」
「他の相続の仕組みと比べて、どのようなデメリットがあるの?」
あなたは今、このように悩んでいませんか。
生命保険信託は、比較的新しい制度であり、多くの人にとってまだ馴染みがないかもしれません。
この記事では、以下の内容について解説します。
・生命保険信託は生命保険と信託を組み合わせた仕組み
・生命保険よりもコストがかかる点や利用できる生命保険会社が少ない点がデメリット
・保険金の受取人だけでなく、用途や支払い方法まで指定できる点がメリット
また家族信託や生命保険との違い、おすすめの人についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
Contents
生命保険信託は生命保険と信託を組み合わせた仕組み
生命保険信託は、生命保険と信託を組み合わせた仕組みです。
そもそも信託とは、自分の財産を信頼できる人に任せ、大切な人のために管理・運用してもらう制度を指します。
信託制度は「委託者」「受託者」「受益者」の3者で構成されます。
| 委託者 | ・信託契約により財産を託す人 ・財産の使用目的や渡し方、受益者を決める |
| 受託者 | ・財産を管理・運用する人 ・受益者のために財産を管理・運用し、その結果生じた利益を受益者に交付する ・生命保険信託では、信託銀行などが受託者となる |
| 受益者 | ・財産を受け取る人 |
生命保険信託を利用することで、保険金を誰に・どのように・どの順番で渡すか、希望を反映させることが可能です。
家族信託との違い
生命保険信託と似た仕組みに、家族信託があります。
家族信託とは、財産の管理・運用を近親者などに託す方法のことです。
家族信託は、財産の対象が金銭に限定されず、生命保険信託よりも自由度が高い傾向にあります。
ただし、家族に受託者となる人がいないと利用できません。
たとえば、障がいのある一人っ子などに財産の管理・運用を依頼するのは難しい場合があります。
生命保険信託は信託のプロが受託者になってくれるため、家族に受託者の候補がいなくても、信託制度の利用が可能です。
生命保険との違い
生命保険信託と生命保険の違いについても確認しておきましょう。
生命保険においても保険金の受取人を指定できますが、一般的には配偶者や子、親、兄弟姉妹など一定の親族に限定されています。
また、保険金の受け取り方は、一括払いや年金払いが基本です。
生命保険信託では、受取人に内縁者や同性パートナー、法人など設定できるケースがあります。
また、受け取り方を柔軟に設定でき、子どもの成長に合わせて少しずつ金額を増やしながら保険金を渡すことが可能です。
生命保険信託のデメリット4選
生命保険信託を利用する前に、デメリットについて理解しておきましょう。
・一般的な生命保険よりもコストがかかる
・信託財産として利用できるのは死亡保険金のみ
・利用できる生命保険会社は数社のみ
・信託できる保険金額に条件がある
一般的な生命保険よりもコストがかかる
生命保険信託は、生命保険の保険料以外に、信託銀行などへの信託報酬が必要になります。
費用の種類および金額の目安は以下のとおりです。
| 費用の種類 | 金額の目安(税抜) |
| 信託契約締結時の手数料 | 5千~5万円 |
| 信託期間中の管理費 | 年間2万円 |
| 保険金受取時にかかる費用 | 分割受取の場合:保険金額の2% 一括受取の場合:10万円 |
たとえば、2,000万円の死亡保険金を20年分割で受け取る契約における費用は、次のようになります。
| 信託契約締結時の手数料 | 5万円 |
| 信託期間中の管理費 | 年間2万円×20年=40万円 |
| 保険金受取時にかかる費用 | 保険金額2,000万円×2%=40万円 |
| 合計 | 85万円 |
生命保険信託を利用する場合は、一般的な生命保険の保険料に加えて、追加のコストがかかります。
利用を検討する際は、追加のコストを含めた総合的な費用を把握し、予算や目的に合わせて判断することが重要です。
信託財産として利用できるのは死亡保険金のみ
生命保険信託は、万が一のときに受益者が確実に保険金を受け取れるよう、信託会社に受取・管理・交付を依頼する制度です。
そのため、信託財産として利用できるのは基本的に死亡保険金に限られます。
不動産や有価証券などは生命保険信託の対象外です。
これらの財産の管理や運用を他者に任せたい場合は、家族信託など他の信託制度を検討する必要があります。
利用できる生命保険会社は数社のみ
生命保険信託を扱っている保険会社は少なく、自分が希望する保険会社で契約できない可能性があります。
また、保険会社ごとに信託会社も決まっているケースが一般的です。
生命保険信託を扱う主な保険会社と信託会社の組み合わせは、以下のとおりです。
| 保険会社 | 信託会社 |
| 第一生命保険株式会社 | みずほ信託銀行株式会社 |
| ソニー生命保険株式会社 | 三井住友信託銀行株式会社 |
| プルデンシャル生命保険株式会 | プルデンシャル信託株式会社 |
| ジブラルタ生命保険会社 | プルデンシャル信託株式会社 |
参考:第一生命、ソニー生命、プルデンシャル生命、ジブラルタ生命
なお、生命保険信託は基本的に代理店で扱っていないため、直接保険会社に連絡する必要があります。
信託できる保険金額に条件がある
保険会社によっては「保険金額1,000万円以上」など、生命保険信託を利用できる条件が決まっています。
少額の保険金で利用したい人にとって、生命保険信託を利用できない可能性があり、デメリットが生じます。
生命保険信託を検討する際には、契約したい保険会社における保険金額の条件を事前に確認しておきましょう。
また、高額な保険金を契約しない場合は、家族信託や遺言信託(信託銀行等が遺言書の執行をサポートする制度)を検討するとよいでしょう。
生命保険信託のメリット4選
続いて、生命保険信託のメリットについて説明します。
・家族に受託者を依頼できる人がいなくても利用できる
・保険金の用途や支払い方法を生前に指定できる
・受益者が亡くなった後の受益者も設定できる
・相続において生命保険金の非課税枠が使える
家族に受託者を依頼できる人がいなくても利用できる
生命保険信託は、生命保険会社が指定する信託のプロが受託者となります。
そのため、家族に受託者を依頼できる人がいなくても利用できる点が特徴です。
たとえば、幼い子どもを持つシングルマザーの場合、子どもに財産の管理・運用を依頼できません。
また、家族信託において家族に受託者を依頼できる人がいたとしても、受託者にとって負担になってしまうケースも考えられます。
生命保険信託は、信託のプロが契約内容を確実に実行してくれるため、安心感があります。
保険金の用途や支払い方法を生前に指定できる
一般的な生命保険では、受取人と保険金額のみを指定することが多く、一括で支払われる保険金を受取人が適切に管理できるか不安が残る場合もあるでしょう。
しかし、生命保険信託を利用することで、受取人や保険金額に加え、保険金をいつ・どのように支払うかまで細かく指定できます。
たとえば「日々の生活費として、毎月15万円を子ども口座に振り込む」というような指定が可能です。
生命保険信託ではさまざまな条件を指定できるため、通常の生命保険と比べて、保険金の利用方法に自分の希望を反映させやすいといえます。
受益者が亡くなった後の受益者も設定できる
一般的な生命保険では、受取人が亡くなった後の受取人まで指定することはできません。
受取人がなくなると、受取人の法定相続人が保険金を受け取ることになります。
これに対して、生命保険信託では、受益者が亡くなった場合に備えて、第二の受益者を事前に設定することが可能です。
このような柔軟な設定が可能なのは、生命保険信託の大きなメリットのひとつです。
相続において生命保険金の非課税枠が使える
生命保険信託においても、一般的な生命保険と同じように、相続時に生命保険金の非課税枠が使えます。
生命保険金の非課税枠とは、死亡保険金の受取人が法定相続人である場合に「500万円 × 法定相続人の数」の金額が、保険金から控除され課税されない仕組みです。
出典:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
たとえば、2,000万円の死亡保険金を受け取るケースにおいて、法定相続人が2人の場合、500万円×2人=1,000万円が非課税となり、残る1,000万円のみが課税対象になります。
生命保険金の非課税枠を利用することで、相続税の負担を軽減できます。
生命保険信託がおすすめの人の特徴4つ
生命保険信託がおすすめの人の特徴は、以下のとおりです。
当てはまる人は、生命保険信託の利用を検討してみるとよいでしょう。
・障がいのある一人っ子がいる場合
・未成年の子を持つシングルマザー・シングルファザーの場合
・子どもがいない夫婦の場合
・受取人が認知症の場合
障がいのある一人っ子がいる場合
障がいのある一人っ子が多額の保険金を受け取っても、計画的に使えない可能性があります。
また保険金を狙った詐欺に遭うリスクなども考えられます。
このような場合に役立つのが生命保険信託です。
生命保険信託を利用すると、子どもが計画的にお金を使えるよう、保険金を分割して支払ってもらえます。
さらに、子どもがお金の管理をまったくできない場合は、信頼できる親族や後見人を「指図権者」とすることで、お金を計画的に使えるようサポートしてもらえます。
指図権者とは、受託者に代わって受益者の財産を監督する人のことです。
生命保険信託により、障がいのある子どもが計画的に資金を使い、安心して生活できるようになります。
シングルマザー・シングルファザーの場合
シングルマザーやシングルファザーが生命保険に加入する際、自分に万が一のことがあった場合に備えて、子どもを受取人に設定することが一般的です。
しかし、子どもが計画的に資金を使えるかどうか心配なケースもあるでしょう。
お金の管理をサポートしてくれる人がいれば安心ですが、元配偶者には頼りたくないという事情も考えられます。
生命保険信託を利用すれば、子どもの年齢に応じて、保険金を支払うタイミングや金額を柔軟に変えられます。
たとえば、18歳までは毎月5万円を支給し、18歳から22歳までの間は大学進学のため毎月10万円、22歳になったら残りの金額を一括で支給するなど柔軟な設定が可能です。
子どもがいない夫婦の場合
一般的な生命保険において、子どもがいない夫婦が配偶者を受取人に指定した場合、配偶者が亡くなった後は、配偶者の両親や兄弟が保険金を受け取ることになります。
配偶者が亡くなった場合は、自分の親や兄弟に保険金を渡したいと考える人もいるでしょう。
生命保険信託を利用すれば、受益者が亡くなった後の受益者を事前に指定することが可能です。
これにより、自分の両親や兄弟を次の受益者として指定でき、自身の希望に沿った形で保険金を渡せます。
受取人が認知症の場合
生命保険金の受取人が認知症の場合、保険金の引き出しや管理が難しいことがあります。
生命保険信託を使うと、認知症を患う受取人の面倒を見てくれる人や施設に、毎月の介護費や生活費として振り込めます。
これにより、受取人が認知症であっても、有益な形で資金を遺すことが可能です。
生命保険信託を含めた相続方法に関する悩みは専門家に相談しよう!
生命保険信託は保険金の受取人や支払い方法を自由に設定できる制度です。
しかし、通常の生命保険よりもコストがかかる点や、死亡保険金しか信託財産として設定できない点など、使い勝手が悪い面もあります。
信託財産が不動産の場合は家族信託を活用する、遺産分割を指定したい場合は遺言書を書くなど、生命保険信託以外の方法と組み合わせて活用することが大切です。
自分が亡くなった後の相続について心配なら、早めにFP・税理士などの専門家に相談しておきましょう。
